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2018、HRテック領域のトレンドを考える。

HR テックのキーパーソンである Josh Bersinが2017年11月に書いた記事 

The HR Technology Trends For 2018: Ten Disruptions Ahead ” を読んで、グローバルレベルのHRテック領域の進化が、日本では今年どのように顕在化してくるのか考えてみた。

 

まず、彼の記事の10大予測はこうだ。

  1. A Massive shift from "automation" to "productivity."
  2. Acceleration of HRMS and HCM Cloud Solutions, But Not The Center Of Everything
  3. Continuous Performance Management Is Here: And You Should Get With It
  4. Feedback, Engagement, and Analytics Tools Reign
  5. Reinvention of Corporate Learning Is Here
  6. The Recruiting Market Is Thriving With Innovation
  7. The Wellbeing Market Is Exploding
  8. People Analytics Matures And Grows
  9. Intelligent Self-Service Tools
  10. Innovation Within HR Itself

 

これらを読んで自分なりの考えをまとめてみたのが以下の5つ

 

 

(1)「自動化」から「生産性」へ、「個の生産性」から「チームの生産性」へ

 

確かにHRテックといえば、今までアナログで処理していたことの「システム化」「自動化」によって人事部門の生産性を高めるというイメージで語られるものがメインだった。ただしそれらは既にトップ課題ではなくなっているというもの。

 

とはいえ、日本より進んでいるUSでもまだ企業の45%が、業務の自動化に重点を置いているそうだ。よって進行中の人事課題として「自動化」は重要だが、メインではないということ。確かに既にこの領域のイノベーションには目新しさはないかもしれない。

 

ちなみに、クラウド型のサービスを導入するには、ひとつのベンダーで統合するのが理想形と考えがちだが、この記事によると、従業員側のストレスを最小化するよう配慮するのは前提だが、複数のベンダーを統合した構造もありとか。

 

で、「自動化」の次のトレンドである「生産性」。日本でも既に、従業員の生産性を高めることを目的としたエンゲージメントサーベイ系のサービスがいくつか登場し始めている。この辺が主戦場かと思いきや、次に来る課題はこれまでのように「個の生産性」からさらに進化した「チームとしての生産性」にシフトしているという。

 

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The HR Technology Trends For 2018: Ten Disruptions Ahead より引用

 

 企業単位ではGoogleは従業員のケミストリーを配慮した配置に数年前から取り組んでいるらしいと聞いている(セプテーニなどもそれに近い)。ただし、企業文化やビジネスモデル、業務性質が異なると、化学反応の公式が違ってくると思うのでこのあたりを一般化できるソリューションのハードルは高そうだ。とはいえ、100点を目指すのではなく70点の出来栄えならばシステムで一般化可能なのかもしれず、この領域はかなり興味深い。

 

個からチームというキーワードは重要だ。

 

 

(2)チームマネジメントは、よりリアルタイム化、透明化。

 

「トレンド3) Continuous Performance Management Is Here: And You Should Get With It」「トレンド4) Feedback, Engagement, and Analytics Tools Reign」この二つのトレンドを読むと、これまで伝統的に行われてきた、特定ターム毎の(半年や一年)目標の設定やその進捗管理、業績評価やフィードバックなどは、よりリアルタイムで新しいスタイルに進化していくだろうと書かれれている。UIはチャットbotかね。

 

具体的には、リアルタイムにチームからのフィードバックを受けることにより、自分のパフォーマンスや改善点も即時にわかるようなイメージ。確かに、半年や一年毎の評価よりも、評価すべきタイミングで評価することによって、ハイパフォーマーに報いることもローパフォーマに改善を促すことも容易になる。

 

従業員のエンゲージメントをリアルタイムに測るツールとしては、国内なら Geppoなどが近いような。Josh曰く、グローバルレベルでも個人に軸を置いたものは既におなじみだが、これからはこのソリューションをチーム軸で解決するサービスが出てくればこの領域のリードプレイヤーになるだろうと。

 

個の働き方も多様化していることを考えると、リアルタイムなゴール設定&評価につづいて、リアルタイムなチーム編成、さらには報酬も年俸でなく月単位あるいは、日単位で支払いが可能になっていくのかもしれない。 

 

 

(3)採用関連のテクノロジーはさらに進化する。

 

企業がもっとも予算を投下する領域の一つとして、かつ失業率が改善しつつある市況も踏まえてて採用領域のテクノロジーはより進化すると言っています。

” the new world of tools has to help us find people with the right capabilities and learning skills, not just technical or cognitive abilities. ”とあるが、技術力や認知できる能力だけでなく、より適切な能力、学習能力など(面接や経歴書からは推し量るのが難しい)素養を見極めるのをサポートしてくれるツールが出てくるのだろうか。

 

そういえば Arctic Shores というゲーム×心理学で採用候補者の意思決定パターンや行動特性を見極めるプロダクトがあり、注目しているのだが、そのあたりのプレイヤー企業が出て来るのだとしたら面白い。

 

 

(4)Wellbeingマーケットの拡大-生産性と心身の健康-

 

この領域では以下のようなキープレイヤーも紹介されており、これらのベンダーを導入した企業が大きな成果をあげたということも伝えられている。

上記のベンダーはざっくりと説明するなら、運動や睡眠、食事等の日常の生活改善の後押しや、自分の心身のコンディションの可視化ができるような、従業員のためのツールとして機能する一方で、一方ではそれらが、次世代の組織管理ツールとして、従業員の心身のコンディションを可視化し、生産性の改善につなぐことができるようだ。

 

デロイト(彼の企業の親会社)でもHRのイニシアチブは「健康」へのフォーカスから始まり、「従業員の負荷軽減」へ、さらに現在は「人間としてのパフォーマンス(Human Performanceとあるが、精神的な健康も含めた包括的なパフオーマンスのことかと推測)」へとフォーカスがシフトしているそうだ。

 

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The HR Technology Trends For 2018: Ten Disruptions Ahead より引用

 

 

(5)HR領域のデータ分析はさらに加速

 

データ分析ーここまでにあげた4つの領域を支える技術でもあり、クロスする要素ではあるのだが、データ分析はさらに加熱&進展すると書かれている。

 

よって、企業にとっても、企業価値向上のために、従業員関連データは顧客の情報と同じぐらい重要で不可欠なものになると同時に、データ活用における倫理の問題やプライバシーの問題を解決することも重要になる。これらのデータ利用における倫理的なガイドラインもこれから模索していくということだろう。

 

以上が、”The HR Technology Trends For 2018: Ten Disruptions Ahead ” を読んで、私が感じたことである。

 

このブログを書きながら、あらためて痛感したのは、企業内における人事部門の役割はよりテクノロジーベースで、戦略的思考、革新マインドが必要になっていくということだ。これからの人事パーソンに求められる資質や能力は過去のものとは、全く異なるのだ。

 

人事部門こそ変化が必要。

 

そして人事領域こそ大きなイノベーションが起こりうる最もおもしろい部門のひとつに違いない。